入試手当、勤務評定、教員昇格基準などの改定についての意見書
投稿日時 2006-12-11 00:56:00 | カテゴリ: 意見書など
|
1入試手当/2勤務評定の改訂/3教員の昇給制度の運用基準/4人事院勧告について/5超過勤務時間の縮減について 全2ページ ------------------------------------ 2006年12月1日 京都大学理事 木谷雅人 殿
吉田事業場労働者過半数代表 若林靖永 (京都大学大学院経営管理研究部教授)
11月10日に開催された説明会で木谷理事からご説明のありました5項目について、当日の質疑応答・意見交換をふまえて意見をとりまとめましたので、提出させていただきます。
1入試手当 入試手当については、これまで時間外労働賃金の形態で支払われていたのは実態に合わない面もあるので、今回、手当として制度化することは望ましいことだと評価します。 しかしながら、問題として2点指摘したいと思います。 第1に、試験監督業務については振替休日によって対応し、手当等の支給がなくなったことです。教員は裁量労働時間制のもとで、しばしば土日も学会等の活動を行っており、週休日の監督業務を別の日に振替休日を指定したとしても、現実にその日に休業するということがほとんど考えられません。教員にとって振替休日は実際的な補償ではないのです。したがって、週休日の監督等業務については超過勤務ないし入試手当を充てることが相当だと考えます。 第2に、大学院入試については手当化しない、課程博士論文審査については手当化しないという点です。多くの教員によって担当されているという認識はその通りだと思いますが、やはり負担量は教員間で差が相当程度あります。したがって、大学院入試および課程博士論文審査についても少額であっても手当化することで、負担を評価すべきだと考えます。
2勤務評定の改訂 勤務評定をすることそのものに意味があるのかどうか、まずはそれが問題です。勤務評定にはコストがかかるのでそれを上回るメリットが生まれなければ、新たな作業量負担が増えるというだけに終わりかねないし、場合によっては効果どころか個人・組織のパフォーマンスが下がることすらありえます。勤務評定を導入する目的をどのように考えているのか、それは本当に実現されるのか、実現されるかどうかをどのように検証して改良するつもりなのか、こういったことが明確になっていないように思われます。 具体的な制度としても問題が少なくありません。 第1に、勤務評定、自己目標設定、勤勉手当成績率判定と1年間に3つの評価制度が実施されます。これらは、時期も異なるし、評価の基準も異なります。このような複雑で一貫性のない評価制度を、評価者は適切に運用できるのか、被評価者は自分に対する評価を納得できるのか、大いに疑問です。 第2に、評定要素等の項目を明確にしても、実際の評価基準、つまり「良好である」とは何をしたらそう評価されるのかということが不明確です。被評価者のどのような態度と行動が「良好である」程度と具体的に結びつくのか、そのことが評価者・被評価者双方に共通了解がなければ、評定プロセスは被評価者にとって具体的な態度と行動の改善、意欲の向上等には結びつきません。 第3に、評価者による勤務評定の結果が被評価者に明らかにされないことになっていることです。評定について評価者と被評価者との面談が実施されますが、評定シートそのものは提示されず、評価者から口頭で説明があるとされています。これでは被評価者は正確に自らの評価を知ることができず、それについての疑問を正すこともできません。説明会での回答では、評定結果を被評価者に伝えると混乱が起こる可能性があるからという説明でしたが、評定したのにその結果を秘密にするということの方が陰湿で、透明性に欠け、評価者と被評価者との間での信頼関係の醸成にマイナスであると言わざるをえません。勤務評定が、評価を通じて被評価者が意欲的に仕事に取り組むようにすることを目的とするならば、被評価者が自らの評価を理解・納得するプロセスはきわめて重要な、欠くことのできないものだと思います。 以上、今回の勤務評定の設計は問題が多く、全学にただちに適用するようなレベルではないと思われます。まずは特定の部局・部署を指定して実験的な導入をすすめながら、京都大学にふさわしいものを育てていくということが望ましいと考えます。
3教員の昇給制度の運用基準 従来も教員の昇給制度はあったが、今回の提案はその性格を変えるものです。従来は特別に学会賞等を授与した場合などを対象に臨時的な性格が強いと理解されていました。それに対して今回の制度は教員の4割を恒常的に対象とした昇給制度であり、まさに教員のパフォーマンスを評価するというものに変わったと理解しています。そこで、まずもって疑問なのが、本学において教員を評価することが一般的に望ましいことなのか、そのことにより教員のパフォーマンスの改善、ひいては大学の役割発揮の向上が果たされるのか、このような「そもそも論」についての検討が欠けている点です。この点についての見解を求めます。 次に、運用基準は具体的な項目を挙げて、しかも教育を最上位に持ってくるというよう明確であるように見えます。しかしながら顕著な賞の受賞という基準以外は、実際は曖昧な基準です。部局長が個々の教員の、たとえば教育の成果や研究の成果、社会的活動等の成果を適正に評価できるのでしょうか。またコストをかけてそれをすることがどれだけプラスになるのでしょうか。 今回の提案は、実際には各部局に運用は委ねるという提案ですが、このような提案を本部が各部局に行うことそのものの是非が問われているように思われます。
4人事院勧告について 昨年の賃金引き下げは不当である。ここでは主張の理由を繰り返しませんが、京都大学として独自に賃金制度のあり方を検討することをさぼっていることは問題です。 今年の人事院勧告でも、比較対象企業規模の見直しによって意図的・操作的に国家公務員の賃金を抑制しようというものであって、先に結論あっての施策と言わざるをえません。基本的に大学という業種での比較を基本にすえて独自の賃金制度設計に取りかかることを要求します。
5超過勤務時間の縮減について 今回提案された文書は、依然、本部から部局への一般的な指示文書を出したら本部責任は免除され、あとは部局の問題であるというような対応を出ていないように思われます。 過半数代表としてこれまでの時間外労働勤務実態を見ていますと、明らかに特定部署・個人で集中的に超過勤務が発生しています。つまり、各部局に注意するようにと指示するような問題ではなく、最初から仕事の分担・人員配置・仕事の進め方等に問題があるのです。部局・職種によるワーストランキング(時間外労働の総時間数ではなく、それを構成人員数で割った「職員一人当たり時間外労働時間数」)を作成し、特定問題部局・部署に対して具体的な改善策をとることが求められます。そのような具体性をもった時間外労働縮減プランを本部は作成すべきでしょう。
以上
|
|